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すべての謎は
『わかりました。やはり真犯人はこの中にいるようですねえェ』
ナポレオンがゆっくりと一同を見回した。
「ぬうゥ」
もしこれがミステリードラマならば、間違いなくクライマックスだろう。
『すべての謎は、このナポレオンに解かれたがっているんだ!』
さらにナポレオンは自慢げに宣告した。
「おいおい、いつまでオレたちはおぼっちゃまの探偵ごっこに付き合わなきゃならないんだ?」
だがヤンキーのカズヤはふて腐れたようにそっぽを向いた。
「フフゥン、悪いわね。これから5分後には真犯人は捕まっているわ」
美人刑事の石動リオも強気を崩さない。
絶対的な自信があるようだ。
「ぬうゥ」さすがにカズヤもこれ以上、いちゃもんをつけられない。
「マジかよ」いったい誰が真犯人なんだ。
改めてボクも容疑者たちを見回した。
やはり一番怪しいのは雲母アスカと九十九リョウの二人だ。
興信所の調査では、この二人が秘かに密会しているらしい。
鬼堂豪もこの二人に裏切られたと知れば、間違いなく相続人から外すだろう。
だから遺言書を書き換える前に最後の手段に訴えたのではないか。
動機としては最も色濃い。
『ではみなさん。スマホを手に持ってください!』
ナポレオンは、まるで小学生を諭すようなモノの言い方だ。
「ふぅん、何をさせる気よ?」
愛人の雲母アスカが眉をひそめて訊いた。
『簡単です。これから全員で『8月1日、名前』と音声検索してください。そうすれば着信画面に真犯人の名前が出ます』
「な、なにィ?」
「ウソをつけ。そんな謎解きがあってたまるか!」
だが一斉にクレームがついた。
いくら何でもそんな謎解きはないだろう。
「みなさん、いま一度、申しましょう。音声検索した十秒後、事件は解決しています」
けれども美人刑事のイスルギリオも動じない。
「ぬうゥ、マジだな」
ヤンキーの鬼堂一八も信じてないようだ。
「本当に音声検索すれば名前が出るのね?」
もちろん愛人のキララアスカも半信半疑だ。
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