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ナポレオン
「よォなんだい。坊や。ここは遊園地じゃないんだぜ」
カズヤは少年の姿を見て戯けたように笑みを浮かべた。
「ええッわかってます」
少年の大和ノアは神妙な面持ちで応えた。
「迷子になったなら、ママにお迎えに来てもらえよ。ケッケケ」
なおもカズヤは少年をあざ笑った。
少年はムッとして視線を逸らせた。
「フフゥン、あいにくね。名探偵ナポレオンが来たからには事件は解決したようなモノよ」
美人警部補の石動リオが自慢げに家族全員の前で宣言した。
「おいおい、なんだ。名探偵ナポレオンって。もしかして、その坊やがナポレオン君なのか?」
またカズヤはバカにして薄笑いを浮かべた。
「いえ、ボクはノアです。大和ノア。ナポレオンはボクの相棒です」
スマホの画面を容疑者らへ向けた。
「フフゥン、相棒ねえェ。ミステリードラマじゃないんだ。実際にあの人が殺されてんだぜ!」
第二夫人との長男で九十九リョウも嘆いた。
あの人と言うのは父親の鬼堂豪のことだ。
彼も多額の借金があり、遺産相続の件で父親の鬼堂豪と揉めていた。
目つきは鋭いがなかなかのイケメンだ。
『ええェ、もちろんわかってますよ。このボク、ナポレオンの辞書に不可能と解けない謎はないんだ』
青い髪の美少年がリモート画面から挨拶をした。
「うゥ!」彼がナポレオンなのか。
「おいおい、いつから警察は、いたいけな『おぼっちゃま探偵』を雇うようになったんだ。ついでに、誰か『探偵ホームズ』にでも依頼して来いよ?」
なおもカズヤはナポレオンをバカにして揶揄した。
「事件当時、ここにいる方で全員ね」
しかし石動リオはカズヤを無視し一同を見回した。
「……」みんな視線を巡らせた。
警戒しているようだ。
「あのォ、奥様が寝室で休んでいますよ」
誰も応えそうにないのでボクが説明した。
よほど本妻のレイラはショッキングだったのだろう。
遺体を見て失神したのでボクたちが寝室へ運んだ。
「そうですか。他にはいませんね」
美人警部補が確認した。
「さァどっかに幽霊が隠れてなけりゃァな。ケッケケ」
だがカズヤはあざ笑って茶化した。
「では少しだけボクたちも事情聴取をして構いませんか?」
少年のノアが一同を見回し訊いた。
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