ナポレオン

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ナポレオン

『ええ、真犯人はすでに鬼堂氏を殺しておいて。そのあと皆さんをこの屋敷へ呼んだとも考えらますからね』  ナポレオンは笑みを浮かべたまま応えた。 「ううゥ……」 「そういえば、なんか雰囲気が違ったわ」  愛人の雲母(キララ)アスカがボソッとつぶやいた。 「雰囲気が?」 「ああァ、そうだ。丸ハラがなかったよ」  ヤンキーのカズヤも思い出したようだ。 『丸ハラ?』 「オヤジは、ラインの文章の終わりにきちんと丸をつけていたんだ」  九十九(つくも)リュウが応えた。 『はァ、なるほど、それで丸ハラスメントですか』  年代が若くなるほど、丸ハラに注意しているようだ。 「だとするとボクが発見するよりかなり前に殺人犯が……」  あの父親(ひと)を殺したことになる。 『そういえば、もうひとり奥様の鬼堂レイラさんがいるのでは?』 「ええェ、パパの遺体を見て失神して倒れたらしいわ。都合よくね」  愛人のキララが毒舌を交えて応えた。 「今、寝室のベッドで休んでますよ」  九十九(つくも)リョウが応えた。 「フフゥン、どうせ、演技よ。離婚される前にレイラさんが()ったんでしょ。っで、都合が悪いんで失神した振りをしたのよ」  愛人の雲母(キララ)アスカは言いたい放題だ。 「ほォ、それは聞き捨てならないな」  コワモテの鰐口警部補が身を乗り出した。 「あの女はお払い箱なのよ。無一文で追い出される前にパパを殺したのよ。そうに決まってるわ」  愛人の雲母(キララ)アスカは勝手なことを言った。  そこへリビングのドアが開き、本妻のレイラが現れた。 「いい加減なことを言うな。この性悪の女狐(めギツネ)が!」  いきなり本妻が愛人に掴みかかる勢いだ。 「ちょっと、レイラさん。落ち着いてください」  ボクと警察関係者は必死に本妻を押さえた。  
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