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2 私立サーシャ孤児院
「お歌のお姉さんが来たよ!」
ユベール博士と共に私立サーシャ孤児院にきたドナは、あっという間に子どもたちに囲まれた。
「お姉さん、遊ぼう」
「お歌、教えて」
「お姉さんの歌が聞きたい」
子どもたちに囲まれたドナを見て、ユベール博士が微笑んだ。
「ドナ、君は子どもたちと遊んでいて貰えるかな? 私は院長先生と大事な話があるからね」
博士の言葉にドナは素直に頷いた。
ドナが子どもたちと連れ立って行くのを微笑んで眺めながら、ユベール博士は孤児院のモーヴ院長と連れだって院長室に入って行った。
ユベール博士自身、この孤児院出身だった。
モーブ院長がユベール博士の才能に気づいて才能を伸ばしてくれたおかげで今の自分がある。
感謝してもしきれない。
自分が国から高給を貰うと、必要最低限の生活費を除いて孤児院に寄付した。
モーブ院長はどんなに高額な寄付をもらっても、施設や子供たちの衣服を華美にはしなかった。
その代わり、才能がある子供たちが望む道に進めるよう、教育費を費やした。
子どもたちは施設にいながらにして、水準の高い教育を受けることができ、望む資格を取ることが出来た。
そのため生徒のほとんどが18才で施設を出る頃には、大学校へ進学するか、もしくは資格を手にして自分の望む職業に就いている。
残った生徒はそのまま施設の職員となった。
寮母だったり、食堂の料理人だったり。
自分たちが卒業生であるため、子供たちへの接し方を誰より知っていた。
ユベール博士がこの孤児院を出るときと変わらない院長室。
簡易な木製の机と椅子。
古びたカウチ。
でも、清潔に掃除が行き届いていて居心地がいい。
質実剛健なこの施設は、モーブ院長の人柄そのものだとユベール博士は思った。
「ユベール、忙しそうね、新聞やニュースであなたの事を見ない日がないくらい」
茶目っ気たっぷりに言ったモーブ院長は、眼鏡の奥の瞳を少しだけ細めた。
「さて、私の優秀なユベール博士が思い悩む理由は何かしら。相談があるから来たのでしょう。私がこの孤児院を建てた時に、国の力を借りずに私立にした理由はご存知でしょう? 国の過干渉を避けるためよ。だから、あなたが私に相談に来たことは正しい選択ね。さ、時間は有限よ。ユベール」
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