6 想い

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6 想い

「誤魔化さないで! 博士はいつも大事なことを教えてくれた。私は、博士をずっと見てきた。博士が何を考えているか、私には分かる。……私を置いてどこへ行こうとしているの?」  ドナの叫びにユベール博士は困ったような笑顔を見せた。  キッチンに向かうと、水道の蛇口を捻る。 「良かった。ここはね、モーブ院長先生の持ち物なんだ。話しておいたから水もガスも通ってる。とりあえず、コーヒーでも淹れようか。食料も冷蔵庫や冷凍庫にたっぷり入ってる」  言いながら、ユベール博士は冷蔵庫、冷凍庫を確認した。  そして湯が湧くのを待つ間、ドナにポツリポツリと語り始めた。 「僕がドナを作ったのは、人々が幸せになるためだった。病、怪我。親がないなど、普通に生活ができないせいで、貧困に苦しむ人たち。そんな人たちをね、一人でも減らしたかったんだ」  コポコポとキッチンのティーポットから湯の湧ける音がした。  ユベール博士が立ち上がって、カップにインスタントコーヒーを入れ、湯を注ぐ。  香ばしい香りが部屋に広がった。  カップを2つ持ってきたユベール博士は一つをドナの前におき、自分も座って、コーヒーを一口飲んだ。 「ドナは僕の期待以上に働いてくれたね。歌で人々を癒やした。精神的にも肉体的にも。僕はそれで十分だった。ドナは僕や街の人々を幸せにしてくれる存在だ」  ドナはユベールの話に耳を傾けた。 「誇らしかったよ。君と、君を作った僕が。だけど……そのせいで、君は目立ってしまった。目立ってしまったせいで、ドナは国から目をつけられてしまった!」  俯いたユベールの髪に手を伸ばし、ドナは優しく撫でた。  ハッと顔を上げたユベール博士が見たのは、今まで見たことがないほど、大人びて慈愛に満ちた笑顔のドナだった。 「近く、東大国と開戦する。国は君を兵器にしようとしているんだ。僕は……、君を兵器になど、絶対にするものか。ドナは、必ず僕が守るから」  苦悩するユベール博士の隣に行くとドナはユベールの体をそっと包んで抱きしめた。
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