suger man

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 耳障りな鳥の鳴き声で目が覚めた俺は、風間が居ないことに気付いて飛び起きた。  革靴を履いて家の周りをぐるりと周回したが見当たらず、広い畑の奥にようやく彼の姿を見付けた。  黒いワンピース姿の女性が彼に縋り付くようにしているのが見えた。  近づくにつれて、女性が彼の元妻だと気付いた。  俺の気配に気づいた彼女が弾かれたようにこちらを向くと、風間は一瞬焦ったような顔をした。  罪人と言葉を交わした場合、その人もまたハラキリを命じられる場合があるからだ。  目の前の彼女の細い肩を掴むと自分から遠ざけようとする。  風間はそのまま俺に向かって声を張り上げた。 「なあ、この人のこと駅まで送ってやって貰えないか」  動揺を隠しきれない様子の彼女に俺は静かに首を横に振った。 「お互い様です。俺も彼と言葉を交わしてますから」  彼女は心細そうな顔でしばらく俺の顔を見上げていたが、やがて観念したようにこちらへと歩き出した。
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