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車のドアを乱暴に閉めると、駆け足に畑の方へと向かう。
畑の作物の手入れをしていた風間が歩み寄ってくる俺の気配に気付いて腰を上げた。
「丁度これを作りたかったんだ」
風間が指差した先で、アルミ缶で出来た手作りの風車がギラギラと煌めいた。
「アブラムシ対策になる」
更に何か言い掛けた風間の言葉を遮って俺は口を開いた。
「俺はあんたの音楽に救われた!」
風間は驚いたような表情でこちらを見ていた。
「何度も何度も救われて、たった一度落胆させられた」
「…………ああ、そうだな」
「でもあんたが俺に与えたものは、"がっかり"の一言で容易く切り捨てられるようなもんじゃないんだよ」
声を荒げながら言うと、俺は訳もなく溢れそうになる涙を堪えて風間に背を向けた。
背中に視線を感じていたが、結局車に再び乗り込むまで俺は一度も振り返らなかった。
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