suger man

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 長い間芸能界から姿を消していたが、年齢でいうと彼は40代後半。  俺の青春時代は常に彼の曲と共にあった、大切な思い出としていつまでもこの胸に留めておきたかったのに。  今更あの不倫騒動で数多の失態を見せ付けられて、思い出補正はすっかりボロボロに剥がれ落ちてしまった。  資料を手にスーツ姿で車に乗り込む。  馴染みの街並みから遠ざかり、車窓から見える景色はやがて田園風景が延々と続く長閑な田舎町になった。  すれ違う車もほとんどないような山間の道を延々と登っていく。  元有名人が今は田舎の山奥で隠居生活か。  車を降りて肩で息をしながら坂道を登ると木造の古びた小さな一軒家が見えた。  周囲は草木が生い茂り、家の向こう側には広い畑が続いている。  ぐるりと家の周りを歩くが風間の姿は見当たらない。  家の裏には古いアニメでしか観たことのない井戸というものが備え付けられていた。 「……死神みてぇな面だな」  肩越しに声をかけられ振り向くと、男が立っていた。  口髭をたくわえ、肩まで伸びた白髪混じりの髪を輪ゴムで後ろに括っている。  よれたTシャツを身に纏い、履いているデニムの膝部分は酷く擦れている。  一般人はもちろんのこと、介錯人もまた罪人と言葉を交わしてはならない決まりだ。
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