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まんまとしてやられた。
車から降りて、スーパーの袋を持ちながら俺は重い足取りで風間の家へと向かった。
「ご苦労さん」
風間は胡座をかいたままの姿勢で、にこやかに出迎えた。
顰めっ面の俺はその向かい側に座ると、テーブルの上にある自分の分のグラスを手に取った。
ビニール袋から銀色の缶を取り出すとプルタブに指をかける。
プシュッと軽快な音を立てて缶を開けた。
「いやぁ、この音。生き返るねー」
上機嫌な風間を無視して自分のグラスにビールを注ぐと、中身が半分ほど残った缶を素っ気なく向こう側へと滑らせた。
風間はそれを受け取ると缶のまま一気に中身を飲み干す。
「半年ぶりの酒は格別だな」
「………」
箸で摘んだ干し肉を口の中に放ると、風間はもう一度ビールを喉の奥に流し込んだ。
「やっぱり干し肉にぴったり合う」
悔しいけれど風間の言う通り、干し肉とビールの組み合わせは極上の美味しさだった。
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