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「行ってしまわれるのですか」
「ええ、お約束の日になりましたので。怪我が治るまでお世話になってしまいすみません」
村長から報酬を受け取ったブリちゃんはこの村を去り、狩人のギルドに戻ることになった。
俺はと言うと──。
「……って、なんでアンタがついてくるの!」
「いや、だって俺、行くとこねぇし、ブリちゃんがいなきゃ異世界の歩き方わかんねぇし。召喚したのブリちゃんだから、面倒見てくんねぇかな?」
と、調子のいいことを言って、彼女についていくことにした。
天気もいいし、緑の草原と青い山肌が見渡せるのどかな景色はお散歩デートにはもってこいだ。
一方でブリちゃんは呆れながらため息をついた。
「もー、任務が終わったら自由って言ったでしょ! ついてこないでよ!」
頬をぷくっと膨らませ、早歩きで俺を置いていこうとする。
ラビの駆除に奮闘していた時の健気なブリちゃんが霞むほどに、ツンツン要素しかなかった。
言われたとおり、足を止めて立ち止まっていると、ブリちゃんが振り向いた。
「……」
ジトッとした目は「なんでついてこないの?」と言いたそうである。
「まぁまぁ、そうツンツンしなさんなって」
ポンポンと頭を撫でてやると、ブリちゃんはツンと口を尖らせた。
この強がっている表情は、本人には申し訳ないけど、かなりそそるものがある。
しばらく黙っていたブリちゃんだったが、むんずと俺の手を掴んで強引に歩き出した。
「しょうがないわね! 行き倒れされると気持ちが悪いもの。アタシが面倒を見てあげるしかないわね。感謝しなさい!」
よしよし、懐に入り込めたぞ。これでしばらくは路頭に迷うことはない。
「よろこんでー!」
「何その返事、変なの!」
「ところでブリちゃんって何歳なの?」
「15歳。15歳になればこの世界では大人」
「へっ!? まじ!?」
現代では未成年の少女に“そそる”なんて邪念を抱いてしまった俺はどうしようもない野郎だが、ブリちゃんはやっぱり放っておけない。
それを信念に、彼女のパートナーとして、どこまでもついて行くつもりだ。
あ、もちろん、狩人の仕事のパートナーってことだ。
……今のうちはね。
俺とブリュンヒルデの旅は、続くっ……!
Fin.
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