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今日は楽しかったよ。
「中学生の頃って覚えてる?」
「そんな昔のこと覚えてるわけないですよ〜」
やっぱり、君にとってわたしなんかどうでもいいんだよね。知ってたよ。
「中学生の頃、私たち会ったことあるんだよ、私のこと、忘れちゃったかな?」
「先輩みたいな人いましたっけ?」
「人って変わるものだよ。ちょっと待ってて、わたしの中学生の頃の写真持ってきてあげるよ」
これを見たら君はどう思うかな。
改心してるわけじゃないと思うんだ。
わたし、君のことは好きだよ。
でもね、昔の君は、大っ嫌いなんだ。
わたしが変わったから、君も変わったんだよね。泣くにはまだ早いはずなのに。もう、泣いちゃいそうだな。
「持ってきたよ。覚えてる?これがわたし。」
私が指を指したのは、幽霊みたいに髪が長くて、表情の暗い、今とは違う、君に、いじめられてた頃のわたし。顔にも腕にも怪我だらけな、見ていられないぐらい痛々しい私。
「……指を指すところを間違ってるんじゃないですか……?」
「ううん、間違ってないよ。君がいじめてたのは、わたしだよ。覚えてないとは言わせないよ」
「先輩変わりましたね……」
大好きで、大っ嫌いだった。
多分初恋だった。
「雪くん。ごめんね」
君の名前は、女の子みたいな名前だった。
わたしより一つ下だったけど、会ったときはよく話しかけてくれた、わたしみたいなやつに、優しくしてくれてたのに、虐めるなんてひどいよ。
「なんで、謝るんですか……?」
「私、雪君の、お酒に毒を盛ったんだ。でもね、最後ぐらいは、一思いに刺して殺してあげたほうが、楽かなって」
「私の、優しさだよ」
虐めの主犯は君のことが好きな女の子だった。君もそれに乗ったから。ううん、止めるのが怖かったから。それに合わせただけなんだよね。
「ごめんね、ごめん。好きだったよ」
「今日は楽しかったよ、ありがとう。」
私は、君を刺した。
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