プロローグ

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 「お知り合いですか?じゃあ、大丈夫ですね?」  イケメンは安心したのか、腰を伸ばして立ち上がってしまった。    「あ、あの……」  行かないで、という気持ちを込めてイケメンをじっと見つめる。    「はい。私は彼女の主治医ですのでご安心下さい」  光琉(ひかる)はそう言うと、私の側にしゃがんで左足首のとある場所を押す。    「いたあー!ひどいっ!先生」  光琉は何も言わずに、私の荷物を左手で持つと、私の左腕を首の後ろに回し、右腕で私の腰をしっかり支えて身体を寄りかからせてゆっくり立たせた。    大通りを走っていたせいで、ちょうど転んだのが大きな花屋の前だった。  光琉はお店の人に目配せすると、外で水やりをしていた店員が寄ってきた。  「大丈夫ですか?」  「すみません。タクシー停めてもらえますか、そこの通りの前に」  「いいですよ」  その店員はタクシーを手招きして目の前に呼んでくれた。    「光琉先生、私行かないから……」  私が言うと、何も言わずタクシーの前に引きずっていく。  「ねえ、せんせ……」
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