出会い

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 「あ、すみません。細川紫です。今日はお忙しいのにお時間頂きありがとうございました」  ぺこりと頭をさげる。  「いやだ、そんな他人行儀な。やめてちょうだい。親戚なんだから、あなたは私の姪なのよ。さあこちらへ」  そう言うと、部屋へ向かって歩き出した。  病院とは思えないような、絨毯のうえを歩いて行く。  「綺麗な病院ですね」  私が感極まって話すと、彼女はそうねと呟いた。  応接室という札の出た部屋を入ると、立派なサイドボードや調度品、革張りソファと大理石のようなテーブルが迎えてくれた。  目を見張る。落ち着いた調度品なので、華美な感じはしないのに、どこか上品で重厚感がある。センスの問題かも知れない。ちょっと、柏木の院長室と比べてしまった。  「どうぞ、かけてちょうだい」  そう言われて、借りてきた猫のようにおそるおそる黒いソファにすわる。すごい。なんていうか、雲の上に座っているみたい。  「丁度お茶の時間だったし、美味しいケーキ屋さんが近くにあるから買っておいたわ。好きなのを選んでね」
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