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涙目の私を見て、京介先生が驚いている。恥ずかしくて、下を向いた私に藤野先生が言った。
「この病院は看護師への患者のセクハラを許しているんですか?」
眼鏡にマスク姿。表情は見えない。だが、少し大きな声で話す。
「……塩田さん。どういうことかな?新人の子が泣きながら相談しているのにそれはないんじゃないかな?」
京介先生が塩田さんに言う。彼女は青くなって、目をキョロキョロさせると先輩の看護師の先輩に助けを求める視線を送っている。
「一部患者さんのそういった行為を一度許すとエスカレートするのはわかりきっていることだよ。自分達が被害にあうのにそのままなのはおかしいね」
藤野先生は言う。
「あ、あの。上の方には相談しているんですけど、何も変わらなくて……」
目線を送られた先輩看護師は藤野先生に言う。
「……京介。お前何もしていないのか?」
矛先が変わった。
「おいおい、俺のせいにしないでほしいな。確かにあの人はどうしようもないけど、注意しても聞かないんだよ。一度言ったんだけどね」
「……」
藤野先生は私の横に来るとじろりと見る。
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