将来の夢

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将来の夢

 私の名前は細川(ゆかり)。  私はお父さんがいない、母子家庭。一人っ子。母とふたり、県営団地でずっと暮らしていた。  父はどうやら、他の家庭があるらしく、物心ついてから全く姿を見たことがなかった。  団地には母子家庭も結構あり、難しく考えたことはなかったが、寂しくないと言えば嘘だった。  でも、子供心にあまりお金がないのはわかり、大きくなったらお金持ちになりたいと思っていた。    小さい頃は団地の空き地でよくおままごとをしていた。  「あきちゃんは、だから看護師さんね。私、お医者さんになる」  「えー?どうして僕が看護師?普通男の人がお医者さんで、女の人が看護師だよ。僕のこの間行った病院もそうだったよ」  「いいの。今はふたりしかここにいないから、しょうがないの」  「だから、ゆかりが看護師になればいいんだよ。僕が医者ね」    「だめなの。ゆかりはお医者さんになるの。お金持ちになるから」  「お医者さんってお金持ちなの?」  「知らないの?この間病院行ったときも待ってるおばさんがお医者さんはお金持ちって言ってたよ」
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