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「ふーん。ゆかりはお金持ちになりたいの?」
「うん。お母さんお金稼ぐの大変って言ってるし、保育園でも紫は貧乏って言われたし……」
私の服はいつも同じ。三枚くらいの洋服をぐるぐる着回している。何しろ、お下がりを団地の人にもらったりするから、誰それの服とか意地悪を言われたりする。
「そうか。お医者さんはお金持ちなのか。ふーん。看護師はお金持ちじゃないの?」
「きっと、お医者さんのほうがお金持ちになれるんじゃないかな?だって命令してたよ、看護師さんに。偉いんでしょ?先生とか言われてるし」
「そうかもしれないね。確かに……」
あきちゃんは、上の方を見てじいっと考えていた。
あきちゃんは可愛い顔をしているし、正直私よりも可愛いような気がするから看護師でいいんだよ。
それにいつも保育園でもあきちゃんは人気者。一緒に遊べない。団地に帰ってきたら一緒に遊べるから嬉しいの。
こうやってふたりでお医者さんごっこをしながら夜まで過ごしてきた。
それなのに、小学校に入る頃だった。おうちを買ったと行ってあきちゃんは引っ越した。
私はそのまま団地暮らし。
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