将来の夢

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 「紫……慣れるとは思えない。最初は失神してたけど、まあ吐くだけになっただけ進歩といえるのかな」  里香子はすごい。成績もいいけど、手際もいい。先生が褒めている。彼女は医者の娘だったので血なんて普通に見ていたからなんともないと豪語する。  「ねえ。里香子はどうして医者にならなかったの?お金もあるしも頭もいいのに……」  里香子は外のベンチで私とコンビニおにぎりを食べていた。  「そうね。なろうと思えばなれたかもしれないけど、私は看護師でいいの。子供が出来たら一旦休んで子育てしたり、自分のペースで仕事がしたい。医者の両親は急変した患者さんがいれば夜中や正月でも呼び出されていなくなった。子供時代も寂しかった。自分の子供にはそんな思いさせたくないかな」  「そうだったんだ。知らなかった。お医者さんって大変なんだね」  「そうだね。人の命を救う仕事だから聖職だと思うけど、大変だよ」  そうか……なら、私は看護師でやっぱり良かったのかも。お給料も悪くないし。結構忙しいけど、病院によるし。  「紫はさ、どうして血が苦手なのに看護師にしたの?他にも仕事あったでしょ?」
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