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翌日、俺は婆ちゃんが捨てようとしていた外套を形見としてくれないかと交渉した。
「きっとその方がソウタさんも喜ぶわね」と、快く譲ってくれた。
何となくそれがあれば、爺ちゃんの様に強く生きていける気がしたからだ。
しばらくして母さんが家に着くと、いの一番に大声で怒鳴りつけられる事になる。
「あんたね!お母さんの家に着いたら連絡しなさいって言ったわよね!魔力切れしたなんて言い訳、聞かないんだから!」
すっかり忘れていたので、甘んじて大目玉を喰らうことにした。
「婆ちゃんの家の周りだけ魔力が乱れるんだよなぁ」と、心ばかりの言い訳だけ添えて。
そう言えば婆ちゃんが引越したら、端末の使い方を教えてやらないといけない。
使い方と言っても、魔力を端末に込める程度のものなのだが。
着々と引越しの用意は進む。
爺ちゃんとの想い出が次々と思い浮び、勇者一行の御伽噺を懐かしむ。
「そういえば…爺ちゃんの武勇伝。頭痛しなかったよな」
まさかなと、言葉をこぼす。
すぐに頭を横に振り、疑念を振り払った。
真実がどうであれ、関係がない。
形見の外套を羽織ってみて、遺影の爺ちゃんに笑いかけた。
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