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タカラモノ
婆ちゃんと話し合った結果、俺は蔵の中を整理する役目を授かった。
庭を出てすぐ目につく、木造の建物だ。
処分するか売りに出す物の方が多く、なにより大きく重たいものがある事が任される決め手となった。
俺はというと年代物のお宝が眠っているかもと、密かに心を踊らせた。
「ぼちぼちやるか」
蔵の前に立つとそこそこ立派な錠前が出迎える。
残念ながら婆ちゃんから事前に受け取っていた鍵で簡単に解錠され、ガタリと大袈裟な音を立てて錠前は外れた。
扉は思っていたよりも重厚で、軋む音をたてながら開かれていく。
「うわっ、なにこれ」
建物が息を吸う様に外気を取り入れて、薄暗い倉庫内を日差しが照らす。
ブワッと埃が舞い踊り、思わず顔を背けた。
辺りを見渡すと蔵の中は意外と簡素な造りで、床やら備え付けの棚には雑多に物が置かれている。どうやら二階にもスペースがあるのか、木製の梯子も立てかけてあるのが分かった。
残念ながらというべきか、パッと見た感じではお宝の匂いがするどころか、カビ臭さしか感じない。
諦めるのはまだ早いと自分に言い聞かせ、腕を捲ってお宝探しを始める事にした。
「ま、そうだよなぁ」
気合い十分に時間をかけて探索した結果、散々だったのは言うまでもない。
カビ臭い本類はほとんど何が書かれていたのかわからない状態で、識別可能な物も見慣れない言語で記されていた。
古びた木箱類から小さなメダルが出てきたときには思わず声をあげたが、ほんの数枚程度でほとんどが錆びていたり欠けていたりしている。
破れたローブ、子供のラクガキ、干からびた草、謎のオブジェ、大鍋やらツルハシに、ただの棒、etc。
どれもこれも価値がありそうには到底思えないものばかりだ。
「本類は婆ちゃんに見てもらうとして…後は上か」
期待を胸に梯子を登っていくと、上の方には天窓がついていて思っていたより明るい。
空間はあるものの一階と比べて伽藍としており、麻袋やらがあるが一番目についたのは、装飾が施され箱だ。
もしかするとこれがお宝なのかと、引き寄せられるように近付いた。
おそるおそる開けてみると、中には亜麻色の布が一着だけ。大きな溜息が漏れる。
触れてみると素材は良く、埃もさほど積もっていない。
手に持って広げるとそれは外套の様で、ヒラリと紙が床に落ちていくのに気が付いた。
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