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「なんだ…これ」
落ちた紙を拾い上げると、それは古ぼけた写真だった。
そこには四人の人物が写っている。一人は気弱そうな表情のローブを纏った眼鏡の男、その肩をがっしりと掴み豪快に笑う派手な鎧を身に付けた大男。
目に留まったのは、残りの二人の方だ。
まるでお伽話に出てくる様な、白磁の肌と白銀の髪を腰まで下ろした絶世の美少女が、つまらなさそうに目線を逸らしていた。何処となく婆ちゃんに似た雰囲気を感じる。
その隣にはーー
「爺ちゃん…?」
亜麻色の外套に剣を肩に乗せ、屈託の無い笑顔で佇むその青年の顔がーーはっきりと遺影の爺ちゃんの笑顔に重なった。
しばらく呆然と写真を眺める。
爺ちゃんらしき人物の歳は俺と同じくらいだろうか。この隣に居る美少女は本当に婆ちゃんなのか?
他の二人は一体どんな関係なんだ?
そもそもこの前時代的な服装や、手にする剣なんてまるでーーー御伽話の“勇者”みたいではないか。
「いやいや、まさかな。流石にそれはないだろ…」
実際この世に“勇者”なんて呼ばれた人物が存在していた歴史はない。
もちろん絵本の様な創作物では、そういった物語はいくつもあった。
ただ、俺の記憶に残っている勇者というのはそういったものではなく、爺ちゃんが来るたびに聞かせてきた武勇伝。
もとい与太話の方だ。
「昔の爺ちゃんは勇者として世界を救う旅に出ててな。猛毒を吐くこーんなデカい邪龍の尻尾を、一刀両断した事もあるんだぞ!」
身振り手振りを交え冒険譚を語る爺ちゃんの姿は楽しげで、冗談だと分かりながらも子供ながらにワクワクして聞いていたのを思い出す。
その度に婆ちゃんは困った顔をして、うちの両親はまたその話かとあきれた様子であった。
それがもし、嘘ではないのだとしたら。
「ま、そんなわけないか」
そもそもドラゴンなんて架空の生物もいなければ、世界が救われたなんて話を聞いた事がない。
大切なものでありそうな外套と写真だけは婆ちゃんに確認して貰うとして、分別作業に戻る事にした。
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