虚言癖

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
12月の末。 私は人を殺した。 小規模な村で、友人を、川に落としたのだ、特に意味はない。 友人を落としてから、少し焦った様に、息を荒くし、ぐしゃぐしゃになるぐらいに、泣いて、泣きながら、通りすがりの男にこう言った、 『友人が、川に落ちて、しまい…」 と、途切れ途切れに、縋り付く様に、軽く、叫びながら、そう、言った。 そうすると、男は川に飛び込み、私の友人を探した、そこまで流れていなかったが、男は目が悪かった様で、見つけるのに少し多くの時間がかかってしまった。 友人は、死んだ。そう、知っていても、彼の葬式には行かなかった。 2月中旬。 私はひとりの女性と死のうとした。 なのに、私だけ、生きてしまった、彼女は幸せそうだった。私を置いて行ったのに、彼女だけは、幸せそうだった。 4月下旬。 自殺をしようとした。未遂で終わってしまった。人に助けられたのだ、最も、私は不幸なのかもしれない。 一つ、真実がある、でも、嘘も存在する。 変な話をしようじゃない。 私が、生まれた時の話だ。 その時は、曇りだったから、晴れだったか。 あまり覚えていない、人の記憶力は、本当に、ないのだな。雨上がりだっただろうか。 一輪の花が私の庭に咲いていた、私は、その花をじっと見つめて、それから、根の近くを持ち、花を引きちぎった。ぶちっと、いう、音が鳴り、花は、叫びながら、苦しそうな声で、人殺しだ、と、言った。                 〈了〉
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!