ラストソング

1/1
前へ
/1ページ
次へ
「またその曲聴いてるの?」僕がそう 尋ねると、妹が嬉しそうに頷く。 そうして、タブレットの画面を叩き 僕に自分の意思を伝える。 『自分の声って自分で発している声と 機器を通して聴く声って違う風に 聞こえるんだね!だから聴くたびに いつも不思議な感じがするんだ。』 妹は、自分の言葉を僕のタブレットに 送る。 そうして、僕達 二人は、笑い合う そう、今 妹が聴いている曲は、 僕が作った曲だ。 そうして歌っている人は、妹だ。 妹は、ある病気で、自分の声帯を 手術で、切除した。 そうしてこの歌は、妹の最期の歌声 だった。 妹は、小さい頃から、歌を歌うのが 好きだった。 将来の夢は、歌手になりたいと 家族に言っていた。 しかし、病気のせいで、声か、命か 選択を迫られる事になった。 妹は、大泣きに泣いた。 最初は、声を失う位なら死んだ方が 良いとまで言って、自分を投げ出していた。 しかしそんな妹の気持ちを無視して 僕と両親は、妹に生きていて欲しかった。 我が儘で、無責任な答えだ。 だから 僕達 家族の我が儘を聞いて くれた 妹の為に 妹への恩返しとして 僕は、妹の願いを叶えた。 妹の最期の歌声をこの世に残す。 それだけは、絶対に叶えると妹と 約束して、それを条件に妹は 手術を受けてくれた。 そうして、妹は、涙を流して 「お兄ちゃん 私の願いを叶えて くれて、ありがとう! 私がんばるからね」 そう言う妹の手を優しく握って励ます 事しか僕には、出来なかった。 ストレッチャーに乗せられて 妹は、手術室に消えて行った。 こうして、妹の歌声は、世に出る事は 無く けれども 僕の胸にも 妹の胸にもいつまでも残り続けた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加