髪の毛が伸びたから切りに行こう

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春麗らかな日私は、伸びた髪を切る為に行きつけの美容院に向かう。 行きつけの美容院のドアを開き ドアベルの音を聞き奥から一人の 美容師さんが出てくる。 「響子ちゃんいらっしゃい」 「加賀屋さんこんにちは」 私の髪をいつも切ってくれる加賀屋さん私は、お馴染みの決まった席に座り 「今日は、どうする?」と加賀屋さんが聞いて来る。 「暑いから思い切ってショートにして 涼しくしようかなあ」 「分かった前髪は、どうする?」 「あ~あ前髪は、あまり弄らない 感じで!」「分かった!」 そうして、加賀屋さんは、私に 髪の毛が掛からない様に大きい ポンチョみたいな布を掛け そう言えばこの布名前とかあるんだろうか? 特にそこは、気にした事は無かったなあ だって、私は美容院で一番好きな音は、はさみを髪に入れる音だから シャキシャキと美容師の人特有の細い はさみを持って髪の毛を梳いたり 切ったりする音が好きだ。 シャキシャキと細かい音が鳴って私の 髪の毛が床に落ちる音 加賀屋さんの指先が私の髪の毛に 通り毛束を少しずつ切って行く シャキンシャキン背中まで、あった 私の長い髪が首の襟足位まで短く なって行く 私の希望通り加賀屋さんは前髪を軽く 梳く程度で止めてくれた。 そうして髪の形が出来上がると 「此方へどうぞ」と加賀屋さんが シャンプー台まで、案内してくれる そうしてこの仕上げのシャンプーの 時間も私には、至福の時だった 仄かに香るシャンプーの匂いと 一緒に加賀屋さんの長く伸びた指で 優しくかき混ぜられる様に洗われると 擽ったくて心地良い ずっとこうされていたいと思ってしまう シャンプーをし終わった髪をタオルで 包んで、髪の毛が痛まないように 気遣って拭いてくれる加賀屋さん 労る様に加賀屋さんの長く伸びた指先がタオルを持ち上げる。 そうして、最後にドライヤーを髪に掛けて加賀屋さんの指先が滑る様に 私の髪の毛を撫でて行く そうしてふんわりとなった私の髪の毛 髪を切って今まで髪に隠れていた 耳が外に露わになった。 その耳元に加賀屋さんが優しく 「終わったよ」と声を掛けてくれる。 私は、「ありがとう」と加賀屋さんに にっこり笑いかけ会計を済ませ また、ドアベルを鳴らし出て行く その際加賀屋さんが「また髪が伸びたらいつでもおいで」と声を掛けてくれる。 私は、小さく頷いて無意識にスキップをして帰った。 この髪を切ると言う一連の行動が 美容院で髪を切るのが好きだから 髪を伸ばして行きつけの美容院に行くから好きな人に会いに行きたいから 髪の毛を伸ばしていたんだと私が 気付くのは、もっとずっと後の話だ。
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