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放課後に誰もいなくなった教室で、友人である田中と早川と3人で1つの机を囲んで座る。
絶対に負けられない戦い。結果はすでに手元にある。テストの答案用紙を掴む手は緊張で汗ばんでいた。空気が張り詰める。
「いいか、せーので机に置けよ」
田中に言われて俺も早川も頷く。
「いくぞ、せーの」
バンッと音を響かせて机に答案用紙を全員が叩きつけた。
2人の点数に目を走らせる。早川95点。……95?! 田中は65点。俺は60点。5点差で田中に負けた。勢いよく机に突っ伏すと、答案用紙が滑り落ちる。
「中森の負け!」
「良かった……」
早川は手を叩いて笑い、田中は胸を押さえて安堵の息を吐く。
「っつーか、早川の点数は何なんだよ! いつも俺と田中とそんなに変わんねーのに」
「賭けしたじゃん。絶対に負けられないと思って、めっちゃ勉強した。俺、やればできる子だったみたい」
いつもは勉強しなくて俺たちと一緒だったって事か。俺はテスト前にはそれなりに勉強はしている。
「なぁ、マジでやんの? やっぱりやめない?」
「往生際が悪い! 中森だって乗り気だっただろ」
自分が負けると思っていなかったから、軽い気持ちで賭けに乗った。
「じゃあ、中森は好きな人発表してください!」
「発表するまでもなく日下部誠司だろ?」
煽る田中に早川は平然と言った。
「え? は? 何で知ってんの?」
動揺して顔が熱くなる。きっと耳まで真っ赤だ。
「だってよく見てるし。田中だって知ってんだろ?」
「そうだけど、本人の口から聞きたいじゃん」
「わりぃ! 俺が言っちまった」
ちょっと待て。田中にもバレていた?
「俺ってそんなに分かりやすいの?」
「大丈夫大丈夫! 多分知ってんのは俺と田中だけ。俺たちいつも一緒にいる仲良しじゃん」
「よし、早速明日罰ゲームしようぜ! 日下部呼び出す手紙書けよ」
田中にペンとメモ帳を渡される。渋々受け取って『日下部誠司くんへ 10日の放課後体育館裏に来てください。 中森綾人』と明日の日付を入れて書き綴った。
罰ゲームの内容は、好きな相手を言うものではない。『好きな人に告白する』というもの。
下駄箱に入れようとすると、まだ日下部くんの靴が残っていた。靴の中に紙を折りたたんで入れる。
「じゃあ明日、罰ゲーム告白頑張れよ!」
「めっちゃ応援してるから!」
2人に背中を思いっきり叩かれて激励された。顔はニヤニヤしているから、面白がっているだけだけど。
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