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寂れた菓子店の前を通りかかると、店頭に見事な飴細工の椅子が展示されていた。大きさは三十センチほど。青と金の優美な装飾がほどこされ、職人技が光る一品だ。周りには銀糸が張り巡らされ、上品さを演出している。特筆すべきは椅子に座っている妖精の人形だ。どこをとっても繊細な造形で、まるで本当に生きているようだ。
そう思って見つめていると、なんと妖精は立ち上がり、私を指差した。
「私の美しさに見とれるのは結構だけど、身の振り方には注意なさい。この椅子を作った男は、私の羽をもいで飴細工の飾りにしようとしたの。その度胸に敬意を表して、彼には一生を賭して、私達のために美しい飴細工を提供するよう、契約させてもらったわ」
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