2. ゴーストフェイス

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2. ゴーストフェイス

 オレは咄嗟に床を転がっている酒瓶を掴み鎮圧ロボットに投げつけた。 「パーン!」と酒瓶が1体のロボットに命中する。傷にもならないが瓶に残っていた中身がロボットの機体を濡らし、アルコールがロボットから滴り落ちる。3体のロボットは動作を止めるとオレの方を見て言った。 「コウムシッコウボウガイ、ハンギャクザイテキヨウ、タダチニチンアツ!」  オレは仕上げにオイルライターを取り出し、着火した状態でアルコールが付着した1体の機体にぶつけた。  炎があがった。  数人の客がその隙に倒れている大柄の男を抱えて逃げる。ゴーストフェイスの2人組はそんな状況下でもまったく怯む様子もなくMIKI(ミキ)に襲いかかる。フロアーは既にパニックだった。  オレは燃え上がる鎮圧ロボットが手放して床に転がった電圧警棒を拾いあげた。MIKI(ミキ)を抱きかかえ連れ去ろうとするゴーストフェイスの1人。 「放してよ――!」  MIKI(ミキ)が暴れている。それをフォローするように後ろからついて行くもう一人の方にオレは電圧警棒を振り下ろした。 〈バチ、バチ、バチ!〉と火花と共に焦げ臭い匂いが鼻をつく。 「ギャ――!」  叫び声をあげて1人のゴーストフェイスがその場に倒れ動かなくなった。ようやく状況に気づいたもう1人のゴーストフェイスはMIKI(ミキ)を放り出すと、オレに視線を向け身構えて来た。どうやら何かの格闘技の(かた)らしい。  ゴーストフェイスは距離を詰めて来たかと思うといきなり左足のハイキックを繰り出した。それを交わした、と思う間もなく直ぐに右足のローキックが飛んで来た。オレは左腕でガードした、激痛が走る。まともに喰らった……。 「グッ!」  思わず声が出る。ヤバい、もう1発左腕に同じものを喰らったら確実に骨が砕ける、いや、もう折れたか? ゴーストフェイスはオレに考える間も与えず次から次へキックやパンチを繰り出して来る。しかも上下左右、ランダムに飛んで来るから防御の予測が出来ない。2発繰り出すと必ず1発は喰らう、確実にオレはダメージを受け消耗する。倒れた拍子に床を転げ回るくらいしかなす術がなかった。
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