目覚まし時計

「人形は、迷惑しているのは分かっているが、１日に１度は歌わないとストレスが溜まるので、申し訳ないが我慢して欲しいと言っています」

「あの、私もストレスが溜まっているのですが…」

「本当にゴメンと言っています」

「歌うのを止める気はないんですね、分かりました。
せめて、歌う時間を変えてもらえませんか？」

「それは出来ると言っています。
何時がいいか、事前に教えてくれたら、それに従うと」

「そんなこと出来るんですか！
ならば、もっと早く知りたかったです。
じゃあ、音程を合わすことはできますか？」

「私って音痴なの？と聞いておられます」

「ごめんなさい、今のは忘れて下さい。
じゃあ、フルコーラス歌うのはやめて、もっと短くてしてもらうことは出来ますか？」

「歌に満足した所で『ありがとう、上手だね』と言ってくれたら、歌うのを止めると言っています」

「分かりました。私も大人なので、言えます。
あと、もうちょっと小さい声で歌ってもらうことはできますか？」

「小さな声で歌い始めることは出来ると言っています。
ただ、だんだんと声が大きくなるのは我慢して欲しいと」

「分かりました、ボリュームが上がりきる前に止めたらいいんですね」

「今は歌うのを止めて欲しいけれど、しばらく経ってから聴きたい時は『10分後にもう一度、歌って』と言ってくれたら、リクエストに応えると言っています」

「スヌーズ機能まで付いているんですか？
もう、目覚まし時計ですよね？」