目覚まし時計

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「無理ですね」 人形を見た途端、除霊師だと名乗った女性は言った。  「無理なんですか?」 「はい、無理です」 “試してみるとかも、ないんだ” マミコはびっくりしながらも、こんな無駄足になるなら、ココが歩いてこれる範囲で良かったと思う。 電車賃がもったいない。 帰ろうとマミコが立ち上がった瞬間 「この人形は貴女に話したいことがあるようです。 私はそれを、貴女に伝えることが出来ます」 と除霊師が言った。 「人形は、何を話したいと言っているんですか?」 「半額でどうでしょう?」 「え?」 「除霊ができなかったので、除霊のお金は頂けません。 通訳は、その半額でいかがでしょう?」 マミコは除霊師の言葉を理解するのに少し時間がかかった。 そして、考える。 「除霊できていなかった場合は、全額キャッシュバックでしたよね? 通訳の場合も、違っていた場合にはキャッシュバックがあるんでしょうか? 」 「もちろんです、私が人形に代わってお伝えする言葉と、今後の人形の動向に齟齬があれば、全額お返しいたします」 “お金を返してもらいに来たら、どうせまた、このお店もなくなっているんだろうな” と思うものの、他に手立てもない。 使うつもりでいたお金の半分で済むのだ。 マミコは通訳を依頼した。
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