4人が本棚に入れています
本棚に追加
「無理ですね」
人形を見た途端、除霊師だと名乗った女性は言った。
「無理なんですか?」
「はい、無理です」
“試してみるとかも、ないんだ”
マミコはびっくりしながらも、こんな無駄足になるなら、ココが歩いてこれる範囲で良かったと思う。
電車賃がもったいない。
帰ろうとマミコが立ち上がった瞬間
「この人形は貴女に話したいことがあるようです。
私はそれを、貴女に伝えることが出来ます」
と除霊師が言った。
「人形は、何を話したいと言っているんですか?」
「半額でどうでしょう?」
「え?」
「除霊ができなかったので、除霊のお金は頂けません。
通訳は、その半額でいかがでしょう?」
マミコは除霊師の言葉を理解するのに少し時間がかかった。
そして、考える。
「除霊できていなかった場合は、全額キャッシュバックでしたよね?
通訳の場合も、違っていた場合にはキャッシュバックがあるんでしょうか? 」
「もちろんです、私が人形に代わってお伝えする言葉と、今後の人形の動向に齟齬があれば、全額お返しいたします」
“お金を返してもらいに来たら、どうせまた、このお店もなくなっているんだろうな”
と思うものの、他に手立てもない。
使うつもりでいたお金の半分で済むのだ。
マミコは通訳を依頼した。
最初のコメントを投稿しよう!