目覚まし時計

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コンビニのHPによると、お店は駅から徒歩8分。 記憶と勘を頼りに、住宅街の中を歩いていく。 「こんな所に骨董品店なんてあったっけ?」 一軒のお店の前でマミコは足を止めた。 駅の北側はよく知らないとはいえ、何度かは来たことがある。 骨董品店があった覚えがない。 この辺りは滅多に来ないのだから、知らない間にお店が入れ替わった可能性もある。 だけど店の雰囲気は、ここ数年の間にオープンした感じではない。 時間の流れに取り残されたような、重みと、廃れ具合があった。 マミコは骨董品に興味がない。 だから骨董品店なんて入ったことがない。 なのに気づけば、当たり前のように店のドアを開けていた。 微かにカビのような匂いがする。 心なしか空気が埃っぽい。 咳き込みそうになるのを我慢しながら、マミコは店内の暗さに慣れるのを待った。 ようやく店の様子が分かってくると、奥にカウンターがあり、その向こうに年老いた男が座っているのが見えた。 伸ばしっぱなしの長い白髪に、仙人のような長い白髭。 ロッキングチェアに揺られている様を見て 「こんなベタな人、いるんだ」 とマミコは感心した。 あまりに店の雰囲気とマッチし過ぎていて、漫画かドラマのようだ。 店主に挨拶した方が良いかしら? そんなことを考えながら老人の方を見ていると、カウンターの奥の棚に人形が飾られていることに気づいた。 小さな着せ替え人形。 「あ!」 マミコは小さく声を出した。
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