目覚まし時計

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骨董品店にあったのは、昔、マミコが妹にあげた着せ替え人形だった。 当時、大流行していた人形だ。 クラスの女子の半数以上が持っていたし、近所で持っている子も多かった。 みんなで人形を持ち寄って、ままごとをしたり、服の貸し借りをして遊んだけれど、誰の人形か分からなくなるようなことはなかった。 同じメーカーの、同じ商品。 でも、どことなく違うのだ。 前髪の斜め具合、眉毛の太さ、口角の上がり方、まつ毛の長さ、頬の高さ。 インクの濃淡、掠れ具合に個性があった。 大人たちには全部、同じに見えていただろう。 だけどマミコたちは、自分の人形がどの子なのか、ちゃんと分かっていた。
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