目覚まし時計

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予想を大きく裏切られた。 まず、本当に歌うとは思っていなかった。 マミコは呪いとか信じないタイプなのだ。 歌うにしても、教科書の歌だなんて思わない。 「こういうのって、意味ありげな手毬唄とか歌うんじゃないの? …それは日本人形か。 西洋風だと、哀しげなオペラとか?」 マミコはオペラを知らない。 雰囲気でオペラと言っているだけ。 まさか元気いっぱい大声で、しかも盛大に音程をはずしながら『グリーングリーン』を歌うとは思いもしなかった。 人形が歌い出した時、あまりの声の大きさにマミコは驚いた。 「これじゃ、お隣さんから苦情が来ちゃう!」 慌てて口を塞いだけれど、元から人形は口を開いていなかった。 口の部分は可動しない。 マミコは家にある、ありったけのバスタオルで人形を包んだ。 それで随分と音量は小さくなったものの、まだまだ近所迷惑の範疇。 バスルームに連れていき、空の浴槽に放り込んで風呂蓋を閉めると、ようやく普段テレビを見る時くらいのボリュームになった。 人形はたっぷり7番まで歌い、サビをもう一度繰り返すと、歌うのを止めた。
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