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本当の孤独は、心の隅々まで命を行きわたらせ、満たしてくれる ───
シェアハウスを申し込み、審査結果が来るのを心待ちにしていた小曽根 泰二郎は、SNSに書かれた審査結果を開いて安堵のため息をついた。
「ようやく、独りになれる。
これで、誰にも迷惑をかけずに残りの人生を生きられる」
静かな廊下でスマホを片手に握りしめ、ゆっくりとデスクに戻って行った。
デスクには所狭しと書類が積まれ、パソコン画面が埋まるほどの付箋を張り付けてある。
椅子に腰かけるや否や、電話が鳴った。
「小曽根さん、どこへ行ってたんだ。
稟議が止まってるぞ」
重要書類を入れる篭に束ができていた。
「すみません、すぐに回します」
左肩に受話器を挟み、電話口の苛立った声に謝る。
右手で象牙の認印を摘まみ上げ、朱肉へ押し付けるとデスクに並べた書類に叩きつけるように押していく。
「部長、取引先からの郵便です」
個人名が入った郵便は、自分で開けるしかない。
近頃は電子化が進んだおかげで減ったとは言え、紙の方が丁寧だと思い込んでいる輩は多い。
表題だけ読んで中身を推測して、不要ならすぐに段ボール箱へ投げ込む。
書類の山がデスクから消える日など永遠に来ないだろう。
少なくとも自分が生きている間は ───
人がひっきりなしに出入りし、走り回る部下たちが他人ごとのようにぼんやりと見えた刹那、人生が走馬灯のように脳裏をよぎった。
仕事に打ち込んでいれば、ひととき忘れられるのだが集中力が切れると首筋にひやりと憂鬱が降りてくる。
何度も歯を食いしばって自分を奮い立たせてきたが、重くなった胃がキリキリと痛みだすとどうにもならなくなる。
呻き声を上げる小曽根を、何人かの部下が認め休憩室へ運び込んだ。
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