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アラタが体育館のステージを見た直後、ステージにスーツを着た男性が慌てながら、卒業式が始まるのを待つ生徒の前まで走ってきた。
その男性は訴えるように大声で、生徒たちに言葉を発した。
「さ、先程…刃物を持った不審者が学校の教室に現れました!危険ですので、皆さん外に避難してください!」
周囲がざわつき始め、生徒たちが先生の誘導に従い、一斉に外に逃げ出し始めた。
だがその内一人だけ、青髪の生徒が、他の者とは別の方向に逃げていくのをアラタは見ていた。
アラタは冷静に今の状況を分析し始めた。
「なるほど。今言っていた不審者が僕ってことか。でも随分早く見つかったな」
僕は、21100人も人を殺した殺人鬼にしてはずいぶん詰めが甘いなと感じていた。
「違うよ〜」
「え?」
彼女が指摘するように話してきた。
「あれは、ある人をおびき寄せるための、君の罠だよ。本当は不審者なんかいない」
言っていることが分からず、僕は彼女に説明を求めた。
「じゃあ、なんでさっきの先生は、不審者がいるって嘘をついたんだ?それに、おびき寄せるって言ってもみんな外に行ってしまったじゃないか」
「だから、これは君の作戦なんだよ。生前の君のね。まず、さっき走ってきた人は先生ではなく "君" だったんだよ」
「は?」
「あれが自分だって全然気づかなかったでしょ。それが君のすごい所なんだよ。能力って言えば良いのかな?自分の気配を感じさせないっていうか、別人に思わせるっていうか…とにかく、気配を操ることができるの」
彼女が続いて話した。
「人って、絶対に誰にも負けない才能を、一つは持っているものなの。短い人生の中で、自分の才能に気づける人はごく一部だけど、その才能によっては、世界を支配できる力にもなり得るんだよ。
実際、君はその才能で世界が恐れる殺人鬼になったわけだしね〜」
( "人は必ず才能をもっている" ……か。そういうものなのか?気配を操る…すごい能力なのかは分からないけど、僕が僕自身に気付けなかったのを見るに、能力は本物のようだな)
アラタが自分の能力について考えていると、彼女が続いて話しだした。
「それと、"みんな外に行った" って言ってたけど、実は一人だけ、違う行動をしていた人がいたの見えなかった?」
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