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第三話「死の代弁者」
こっちに向かって来たのは、卒業式前に目が合ったあの、白髪の男であった。
それを見て、おかしな点に僕は気づいた。
「何故見えている?」
現実世界の者が記憶の世界の者に干渉することはできないはずだが、何故かその男は僕たちが見えているようだった。
「止まれ!」
白髪の男に3mほどの距離を置き、足を止めるように促した。
先程のこともあり、僕は警戒していた。
白髪の男は、不思議な顔をしたまま、その場に止まった。
互いに重い空気を感じ、沈黙が流れた……
先に沈黙を破ったのは向こうだった
「ちょっと待って、僕は君に謝りたいだけなんだ」
「どういうことだ?」
言っている意味がよくわからなかった。
白髪の男がアラタの方を指差し、そのまま続けた。
「君……僕と目が合ったとき、倒れたでしょ」
そう言われ、アラタは自分の腕が無くなった時を思い出し、頷いた。
「だよね。君があまりにも、こっちを見てくるもんだから、ちょっと殺気を放ってみたんだけど、制御できなくて、やりすぎちゃったんだよね……」
白髪の男はそう言うと、頭に手を置き、申し訳無さそうにしていた。
僕はわからない所を質問した。
「殺気を放ったってどういうことだ?僕は腕がなくなったんだぞ?殺気だけじゃ説明できないだろ」
男は困った顔をしながら話しだした。
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