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そんなことをしていると、警戒心も段々と薄れてきていた。
「ところで、何でお前は僕たちの事が見えているんだ?」
僕は、会った時から気になっていた事を聞いた。
「え?……あ、そっか!君たちは僕の事を知らないのか」
そう言うと、白髪の男は身だしなみを整え始めた。
「僕は "神様から命令を受けている者" の一人、シユウって言うんだ。君たち天界の人たちの姿が見えるのは神様の力の影響だよ」
「え〜!君が神様が言ってた例の男の子だったの〜!?」
彼女は相当驚いていたが、僕も驚いた。きっと神様って言うのは、初めに会った僕に地獄行きの判決を出した、あの龍のことだ。
アラタはより一層目の前の男の事が気になった。
「そうだよ。だから今日は僕に伝えることがあるから来たんだと思ってたけど…どうやら違ったようだね」
シユウはやや照れくさそうに笑っていた。
「ちなみに、神様の命令って何なのか聞いてもいいか?」
アラタが聞くと、男は誇らしそうに手を胸に置き、堂々と言った。
「僕は神様から "世界に最悪をもたらす者" ってやつを殺すように言われてるんだ!誰かは、そのうち分かるからって教えられてないんだけどね。
……どうしたの?二人とも、そんな顔して?」
(あ……これ僕のことだ)
(あ……これアラタくんのことだ)
冷や汗が出てきていた。きっとバレたら殺される。唯一の安心は、こいつが僕を、殺す対象だと分かっていない点だ。
二人が慌てていると、彼女が機転を利かせて、話しだした。
「ア、アラタくん!そろそろ時間だ!行かないとだよね?それじゃあシユウくんまたね〜!」
そう言い、彼女はアラタの手を素早く取り、そのまま光に包まれていった。
「えー!ちょっと待ってよ!もう少し話したかったのにー!」
そのままシユウは消えていく二人を見届けた。
「行っちゃった……。でも、二人ともいい子だったなー、天界の人たちとは思えないよ」
「アラタと……もう一人は何て名前なんだろう?
可愛かったな〜」
シユウは満足し、そのまま他の生徒たちの元に帰っていった。
しかし数時間後、死体付近からシユウがいた痕跡が見つかり、シユウは重要参考人として、警察にお世話になったのだった。
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