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「おい君、今 "全部知ってた" って言ったよな?
つまり、僕がなんで人殺しをしていたのか。だったり、僕が死んだ理由とかもわかるってことだよな?ちがうか?」
アラタが女性の肩を掴みながら、高圧的に質問をした。
「んっ……そんなにがっついて聞いてこないでよ、怖いなぁ〜」
女性はすこし距離を空けて、とてもさっきまでと同じ人とは思えないような、真面目な顔つきで、続きを話し始めた。
「もちろん全部知ってるよ。見ていたからね。
君を天界から監視する。それが私の仕事であり、ここにいる理由なんだから」
「僕を監視するのが君の仕事?」
「そう。全ての人間が……いや、全生物が恐怖したと言われた君という存在を監視し、君に全てを知ってもらうのが、私の役目なんだよ」
驚いた。どうやら生前の僕は、思っていたよりも、ずっと悪に染まっていたらしい。
現実味が無さ過ぎて、本当のこととは思えなかった。
しかし、僕は知っていた。こういう場合、あがいた所で結果は変わらないということを。
僕は覚悟を決めた。
「わかりました……。では地獄に行けばいいのですね……言われた通りに」
アラタが進もうとしたとき、アラタを進ませないように、元のニヤニヤした顔をしながら、彼女が行く手を阻んできた。
「なんだ?僕はもう地獄へ行くんだ。どいてくれないか?」
今更いたずらをしてきて、何なのだろうかとアラタが呆れていたその時。
「君、死ぬ前の自分のことをもっと知りたくはないのかな?」
彼女が言った。
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