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第二話「私が君に言いたかったこと」
光に包まれた二人が来たのは、どこかの体育館の入口であった。
話しを聞いた所、どうやら今日はアラタの高校の卒業式の日のようであった。
卒業式はまだ始まって無いようで、登校しに来ている人たちが見える。
体は地面についており、生きている時と同じように動くことができた。ただ違うのは、自分たちが半透明になっているという点であった。
「普通に歩けるし、息もできる。まるで本当に過去に戻ったような気分だな。でもなんで僕たちの体は半透明になっているんだ?」
「それはね〜、ここは私の記憶の世界であって、現実とは違うからだよ。簡単に言うと、生きている人と死んだ人を区別するために体が半透明になっているってこと。死んでいるから物にも触れられないしね」
そう言われ、試しにアラタが歩いている人の肩に手を触れた。しかしその手は肩に当たる事なく、すり抜けていった。
(なんだか気持ち悪い感触だな。脳が正常に認識していない感じで、むず痒くなる)
「わかったでしょ〜?この世界では、私達は現実に干渉できないの。過去は変えられないし、見るだけだからね?」
彼女が念を押すように、僕に言って来た。
だが、いまさら何の確認なんだ?僕は自分の過去について知りたいだけで、変えるつもりはない。変えた所で、死んだという結果は変わらないだろうし、過去を変えるだなんて、僕はしない。
「わかっているよ。過去を変えるつもりなんて元から無い」
僕が意見をきっぱり言うと、一瞬彼女が驚いた顔をした。
「そ、それならいいや〜、まあ、それじゃあ確認も済んだし、行こうか」
彼女が勢いよく歩いていこうとした手を、アラタが止めた。
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