ロバとパンダとケヤキのおじさん【再編集版】

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 就職で上京してから初めてのゴールデンウィーク。私にとっては初めての帰省。  ローカル電車に揺られて、建物が大きいだけの人の少ない駅を出ると、「こもれびロード」と書かれた看板が見えてくる。  そこをまっすぐ進んで、色褪せた葉っぱの飾りが垂れ下がる、寂れた商店街を通り抜けていく。  昔は一時間ごとに音楽が鳴り、可愛いお姫様や兵隊の人形が踊りだす仕掛け時計があって多くの通行人を釘付けにしたのだが、今は全く動かない。 「ゴメンね、結菜(ゆな)!迎えに行くって言ってたけど、今お客さん来てて30分程遅れそう」  母からメッセージが届いていた。  歩くからいいよと返事したが、荷物もあるし心配だから車を出してくれるそうだ。  なので、商店街を抜けたところにある公園で時間を潰すことにした。他にスーパーやコンビニすらもないんだもん。  懐かしい景色が広がる。  小さい頃は、しょっちゅうここで遊んでいた。けれど、昔に比べて随分遊具も減ったような気がする。  錆びついた箱ブランコは危険だとみなされ器具で揺れないように固定されているし、少し背の高いジャングルジムは一定の高さまでしか登れないようにロープが張られていた。  この公園は、スリル満点のジャングルジムが魅力だったのに。 ……ベンチに腰掛け、自販機で買ったジュースを飲みながらそんな事を考えていた。
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