ロバとパンダとケヤキのおじさん【再編集版】

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 就職1年目の、初めの難関に立たされている私の心の中は憂鬱だった。  特にやりたいことも決まらないまま、地元にいても先が見えないと思った私は新しい自分を探すために敢えて上京という道を選んだ。  けれど、コミュ障の私は都会の人達と中々打ち解けられず、会社の歓迎会でも殆ど話すことができなかった。  気の利く同期の女の子が、率先して先輩社員に酌をしているのを見て焦る気持ちだけが膨らんでいった。  そんな中迎えた長期休暇と帰省。  このまま仕事を辞めてしまいたくなるのではないかと不安が募る。  ふと、俯いたままだった顔を上げてみると、先程まではいなかったはずの子ども達が走り回っているのが見えた。  オレンジ色のワンピースを着てマスクをした女の子と、白黒のTシャツを着た男の子、その保護者と思われる60代ぐらいのおじさん。  男の子は、欠けた小さな王冠のようなものを頭に被っていた。  少し不思議な三人組だったが、子どもが少なくなったと言われるこの街にも少しは活気が残っていて良かったと思えた。  男の子と女の子は仲良く遊んでいたが、鬼ごっこの最中に服を掴まれ二人揃って転んでしまった。 「えーん、パンちゃんが引っ張ったぁ!」 「あーっゴメンよ、ハナ!」  そう謝る男の子自身も転んだため、服の白い部分が砂まみれになっていた。 「コラコラ二人とも、あまりはしゃぎ過ぎたらダメだよ」 「分かったよー、ケヤキのおじさん」  おじさんが優しく注意をすると、子ども二人は素直に大人しくなった。  その光景を微笑ましく眺めていると、足元にコツンと何かが当たった。 「あら、これって…」
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