ロバとパンダとケヤキのおじさん【再編集版】

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「わーん、ぼくの王冠がなくなったぁー!」  男の子が頭を触りながら泣きべそをかいている。 「あの、もしかしてこれじゃない?」  拾い上げた王冠を男の子に持って行き、手渡す。 「あっお姉ちゃんありがとう!」  男の子は嬉しそうに王冠を受け取った。  よく見たら、その王冠は大分年季が入っているようだ。  それに、本来は人が頭に被るものでは無いような気がする。  というか、どこかで見たことがある気がするのだが、どうしても思い出せない。 「見てみて!ぼくは王子様なんだ!かっこいいでしょ」  王冠を被り直すと得意気に男の子はポーズを決めた。それが何とも可愛らしくて、私も自然と笑顔になった。 「私だって、このネックレスお洒落でしょ?褒めて褒めて!」  女の子も負けじと、首から下げている10センチくらいの手作りのネックレスを見せてきた。  メイプルリーフのような形の葉っぱのイラストにラミネートを掛けて切り抜いたものに、パンチで穴を空け赤いリボンを通した手作り感満載のネックレス。 「わあ、可愛いネックレスだね!作ったの?」 「違うよ、もらったんだよ!」 「そうなんだー」  子ども達は、自分の持ち物を褒めてもらったのが余程嬉しかったのか、私に沢山喋りかけてくれた。  その間、おじさんはニコニコしながらずっとこちらを見守っている。 「ねー、鬼ごっこしようよ!()()()()!」 「いいね!しよしよ!ケヤキのおじさんもっ」 「いやいや、わしは歳だからもう高いところには登れないよ」 「じゃあさ、お姉ちゃん一緒に()()()()しようよ!」  たかおにかー、懐かしい遊びだな。  ここは遊具が沢山あったから、色んなところに登って逃げまくってたなー…なんて考えていたら、いつの間にかメンバーに入れられてしまった。
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