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「ふふっ、思い出せたかな?」
女の子は、全部知っていたかのように私に尋ねる。
「私の鼻、笑わないでよしよししてくれたのはお姉ちゃんだけだったよ。ネックレスも、嬉しかったの」
マスクを外した女の子が、まあるい鼻をこすりながら少し照れた素顔で微笑む。
「ここはお姉ちゃんの思い出の場所。
辛くなったときに、少しでも楽しい気持ちになってくれたらいいなって思ってたんだ」
男の子の言葉に、見透かされたような気持ちになる。
「なんで…」
「ずっと、見守っていたからね。君たち…この街の子ども達のことを。見ているだけだったけど、楽しかったよ」
そう言うおじさんは、子ども達から「ケヤキのおじさん」と呼ばれていた。
「もしかして、ここにあった欅の木……」
おじさんは、にっこりと笑う。
「寂しくなったらぼくたちのことを思い出して。
みんな、お姉ちゃんのことが大好きだから」
小さな王冠が夕日に当たってキラリと輝く。
澄んだ笑顔の男の子は、本物の王子様みたいに見えた。
その時、スマホの着信音が鳴った。母からだ。
公園から少し離れた通りまで出て来てくれと言っている。
「もう行かなきゃ。」
公園の前まで来てくれないことに少し疑問を感じたが、わざわざ迎えに来てくれた母にこれ以上の要求は申し訳ない。
「じゃあね、お姉ちゃん!」
手を振る三人に、「また来るからね」と告げて公園を後にした。
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