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ひとすじの希望
「しめた。これで地獄から抜け出せる」
ロープは目前にあった。
死にかけた蛙のようにもがいていた俺にとって、
これはお釈迦様から与えられた、蜘蛛の糸だった。
だが腕を伸ばした俺の意図に反し、躰は引きずり戻される。
半裸の屈強な男が力づくでしがみついていたのだ。
「やめろ、放せ」
怒号が飛び交い、熱を帯びたリングは
さながら地獄絵図の四面楚歌。
必死の抵抗もむなしく、
耳をつんざく無慈悲なゴングが、試合終了を告げていた。
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