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私は意味がわからなかったので、気づかないフリをした。エヴァはそばかすだらけの頬を赤らめて、フォーチェスター城で湯につかれることをどれだけ期待しているかを話している最中だった。
私の足元には小さな黄色い宝石のように小花が広がるメカルドニアが咲いていた。花びらの上に小さなてんとう虫がいた。
ぼんやりとてんとう虫を眺めながら、私は考えこんだ。
私が許せないのは「奴隷貿易」と「家族を危険に陥れる行為」と「裏切り」だ。私の祖父が海賊行為をしていたのは知っているが、彼は「奴隷貿易」だけは手を出さなかったと家族の間では確かな事実として認識していた。彼が最も毛嫌いした商売の仕方だったからだ。
「家族を危険に陥れる行為」とはおそらく世の中の誰しもが嫌いだと思うが、私の父は失踪したし、時間が戻る前は母も行方が分からなくなっていた。少なくとも母については婚約者であるミカエルが関与していると思っている。ミカエルは今後数日のうちに私との婚約を破棄するはずだ。その直前に母の行方がわからなくなるはずだ。リサが失敗すれば。
私の鼻の奥がツンと痛み、目から涙が出てきた。
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