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前の時間軸で公爵令嬢の私に起きたことだけれども、婚約者ミカエルは私の心には最悪な男としてしっかり染み付いている。
彼は裏切りもした。土地の権利書を母がミカエルに売るはずがない。私になんの相談もなく婚約者に売るとはおかしな話が過ぎるのだ。フラれたこともショックだった。従姉妹のアネシュカが彼に全てを捧げたと言って、結婚式を来月行うと言われた時のショックたるや言葉にできないほどの落胆を感じた。
思えば、何もかもが最悪な日だった。母の失踪、婚約破棄、心がわり、裏切り、公爵家の財産を根こそぎ盗まれと推測されること。これが一人の男性に繋がって起きたことだと分かったのは、私の体感だと3日前のことだ。
確かにこれから10日ほど先に起きる未来のことだとしても、彼のせいで私とリサは入れ替わりまでした。リサは身を挺して時を二週間前に戻して、公爵家に潜入したのだ。
アイビーベリー校で昨日のお昼にすれ違った時のリサの真っ青な顔を思い出して、私は心が痛んだ。
だが、私はこのタイミングで、最悪で極悪なミカエルの名前を聞くとは思わなかった。しかも美しいフォーチェスター城の魅惑的な馬番ジョージの口から。
彼は私にその名前を口にした。元婚約者で盗っ人の名を彼は私に告げた。
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