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そのまま父の書斎まで行くと、鍵のかかった机の引き出しを開けた。引き出しの中には思った通り、森の権利書と土地の権利書が入っていた。私はそれを全て抜き出して、そっと胸に抱えて自分の寝室に静かに戻った。
旅行鞄を取り出して、権利書を一番下に入れ込み、質素だと思われるドレスを5枚選んだ。さらに普通の訪問着、普段着、下着と次々と入れ込んで、パンパンに膨れ上がった旅行鞄を持ち、侍女に宛てた手紙を書いて机の上に置いた。
「午後には戻ります。フラン」
私は寝静まった屋敷のキッチンに行き、2つのカゴにパンを詰めて、携帯用の石壺を3つ用意した。1つには水を入れて、2つにはミルクを入れた。鞄を肘に下げ、2つカゴを両手に抱えて私は裏口から出た。そのまま敷地内に住む御者のダニーの家に急いだ。ダンは妻と一緒に、敷地内の馬番用の家がある一角に住み込みんでいる。
ダニーの家の玄関扉を小さく叩くと、何事かとダニーが玄関の外に出てきた。
「フランお嬢様っ!こんな早くにいかがされましたでしょうか?」
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