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広大な敷地に建てられたアイビーベリー校に着く頃には、太陽は高く登っていた。すぐに戻ってくるから入り口で待つようにダニーに告げると、私はアイビーベリー校の中に旅行鞄を持って門をくぐった。
門番は、私と顔見知りであるかのように親しみをこめた笑顔を向けてくれた。
どうやら、リサと間違えられているようだ。木立を抜けるとリサが姿を現した。彼女は無言で広い庭の向こうにある厩らしき建物を指差した。リサは少し青ざめていた。時間を戻すのに力を使ったからかもしれない。
私は無言でうなずくと、リサが指差した建物をひたすら目指した。リサは私になりすました様子で毅然と歩いて門に向かった。私はその後ろ姿をチラッと目にすると、ひたすら目的地を目指した。
――私はリサよ。リサは、私になりすまして公爵邸に馬車で返ったはずだわ。
息を切らして春の日差しを浴びて、私はアイビーベリー校の庭を抜けて、厩に着いた。
入り口につくなり、「遅いっ!」と若い男性の声で私は叱られた。
「ごめんなさいっ」
私は謝りながら振り返った。馬番の格好した若い男性が、不服そうに眉を顰めて私を睨んでいた。
「名前は?」
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