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「リサ・アン・ロベールベルクです」
「初日から遅れる気?いい度胸をしているな。ただで住まわせてもらって学問を教えてもらうのに、遅れるのは褒められたことじゃない」
「馬番のあなたには申し訳ないことをしたわ。わざとじゃないの。本当にごめんなさい」
私はこれまでそういった叱責を受けたことがなかったので、ムッとして答えた。
信じられないほどハンサムな顔をした馬番は、くしゃくしゃの髪をかきあげて、はあっとため息をついた。
「乗馬はできるよな?」
できないとは言わせない口ぶりで彼は私に言った。その物言いは本当に癪に障った。
――誰に向かって言っているの?
私は憮然とした態度で仕方なくうなずいた。
「じゃあ、行くぞ。君はその馬に乗れ」
私は彼が指差した馬を見た。そして目をしばたいた。
――馬番が私に指図をするの?
「に、にもつがあるのだけれど……」
私はパンパンに膨らんだ荷物に視線を落とした。
「だったら遅れるな。馬車はもう行った。馬で行くしかない」
彼はため息をついて私の鞄を取り、自分だけ馬にまたがった。
「ついて来いよ。さっさと来ないと置いて行くぞ」
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