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婚約破棄と怖い裏切りと元婚約者の盗み フランSide
庭に咲くデイジーの花は食べられるのだろうか。可愛い花びらを見つめても、お腹はいっぱいにならない。母の薬にもならない。今日も空は晴れている。空と反対に私の心は曇っていた。どれほどお金を持っていても望む薬は森でしか手に入らない。
私は天を仰いだ。
母が私たちを捨てるわけがない。
私を捨てたのは、婚約者だったミカエルだ。ミカエルは聖人のようにできた人で、心ときめく容姿をしていて、私にはもったいないくらいの人だった。富豪貴族である公爵の子息だ。
ミカエルのことを考えると私の鼻の奥は悲しみのあまりに激しくツンとしてきて、涙が止まらなくなる。だから、私は母のことに集中しなければならない。母の病と母の失踪のことが先だ。
私は息を止めようとする。集中しなければ。今はミカエルのことを頭から追い出すべきだ。
ミカエルのことを考えていられないほど、私は追い詰められているのだ。母を治す薬を手に入れなければならない。そして、ふらりと行方が分からなくなった母を探し出さなければならない。
母は絶望したのだろうか。娘が婚約者に振られたことと自分の病が重なって、心に異変をきたしたのだろうか。
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