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母さえいてくれれば、私たちは幸せだった。いや、そんなことはない。ミカエルに振られたことも、病気の母がいた時から時間の問題だったのかもしれない。元々、ミカエルは私にはもったいないほどの人だったのだから。
では、効果のある薬草はどうだろう。病が治り、元気な母さえいてくれれば、私たちは幸せだったのだろうか?
私はその1点に集中した。
母の病が治って母が元気ならば「幸せ」だと言える。
ならば……
――ならば。薬草を採りに行こう!ついでに、お母様も探してくるのだ。お母様はいつものように森に入ってしまって、その時何かが起きたのかもしれないのだから。
薬草を採りに行くのは森と決まっていた。母はいつもそうしていた。ただし、私たち三人は母から森に入ることを禁じられていた。危険だからという理由で。侍女も従者も執事すら、森に入ることは禁じられていた。
私が森に行こうと自分の気持ちを鼓舞していると、そこへ、従姉妹のアネシュカが我がロベールベルク公爵邸を尋ねてきた。彼女の頬は薔薇色に輝いていた。
パンやミルクを入れたカゴを彼女は抱えている。貧民街に施しを行う時と全く同じ格好だ。
「差し入れよ」
「ありがとう、アネシュカ」
アネシュカが差し出したパンのカゴをはありがたく頂戴した。うちには立派な料理人がいる。でも、今はもらえるものはもらおう。アネシュカの家の料理人も腕が良いと聞く。
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