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私は顔面蒼白だったかもしれない。でも、なんとか力強く聞こえるように祈りながら、声を絞り出した。
「ありがとう!あなたが彼をフったんだから恨みっこなしよ、フラン?」
「もちろんよ」
私は笑顔を必死に作った。私の表情を気遣わしげに見つめたアネシュカはほっとしたように小さく笑った。
「ありがとう。じゃあ、これから式のドレスを仕立てる必要があるから、これでお暇するわね」
「パンをありがとう」
「このくらいなんともないわ。あ!それからね、ミカエルがロベールベルク家の土地の権利書を持っていたのだけれど、あなたたちミカエルに売ったのね?」
私はポカンとした。そんな話は母から聞いたこともない。権利書なら母が持っているはずだ。持っているのは森の権利書以外にも沢山あるが、一番大切なのは森だけだ。いつも薬草を採りに母が行っていた森だ。
「私は知らないわ」
「そう、あなたのお母様から買ったとミカエルは言っていたわ」
――ミカエルに売った?
――売ったのならお母様はお金を手にしたはずわ……。
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